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ZIG ZAG WALK

おもしろきことは,よきことなり。

【私的福岡】やがて2人は「うまい」としか言わなくなった。

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「>あの件でそろそろお礼をしたいんだけど、何が食べたい?

  そうですね、春吉の○○でお願いします。             」

 

メールの返信にはこんな具合に書かれてあった。

食べ物の種類を尋ねたつもりが、特定の店の名前が書かれてあった。

知らない店だ。

名前からすると高そうな感じがするが、お礼なんだし仕方がない。

 

社内の別の部署にいる後輩(男性)に仕事上お世話になったので、お礼に飲みにつれていくことにしていた。

他の部署の力を借りなければどうしようもない案件だったが、趣味のフットサルを通じて知っていた後輩がたまたまその部署にいてくれたおかげで、とりあえずなんとかなったところだった。

 

後輩と二人で飲みに行くのは初めてだった。

続くメールには「ホッピー5杯でお願いします。」と書いてあったので、あまり飲めないのだろうと思い、食事だけでも後輩が希望するものをと思っていた。

若い頃は,どれだけ安く飲めるか,多く食べられるかを基準に店を探していた。

最近は,価格よりも料理や酒のおいしさを求めたいし,店のいい雰囲気を味わいたいと思うようになった。

親しい友人と楽しく時間を過ごせるような店,大切な人の期待を裏切らずにもてなすことができるような店。

そんな店に行ってみたい,知っておきたいと思うようになった。

もちろん,懐事情は暖かくなったわけではない。

「ちょっといい店」に行きたいのだ。

 

告げられた店名について、google先生に尋ねてみる。

回答を見てみるも、やっぱり知らない店だ。

だが、場所には見覚えがあった。

あのうどん屋の2階だった。

国体道路を通って天神に向かったことがある人なら誰でも知っているだろう、あのうどん屋の2階である。

立地としては天神南駅からすぐのところである。帰りも楽だ。

「OK。じゃあ6時30分に玄関前に集合でお願いします。」

そう返事を書いた。

 

「遅くなってすみません」

数日後。

5分くらい遅れて後輩はやってきた。

「じゃあ行きますか」

10月に入り暗くなるのが早くなっていた。雨上がりの天神の空は、どんよりと重い。

目的地は会社から5分くらいのところにある。

国体道路沿いの向かい側の横断歩道までやってくると、1階にあるうどん屋の黄色い看板が目に入った。

深夜遅くまでやっているようだが、機会がなくて実のところ今まで一度も利用したことがない。

 

うどん屋の裏手にある入口に到着する。

「どうぞ」

「いや、どうぞ」

「そうは言わずに、どうぞどうぞ」

上島さんが登場しないくらいに譲り合って階段を登る。

上がり終えると、広いとはいえない三角地に、手前2人がけ4人がけのテーブル席が1席ずつ、奥の厨房の手前にカウンターが5、6席あった。

手前の2人がけのテーブルに向かい合って座る。

「いらっしゃいませ」

女性の店員がおしぼりを2つ持ってやってきた。

「とりあえず生で」

決まり文句をいいながらおしぼりを受け取った。

 

一息ついて、傍らに置いてあるメニュー表を見ようとした。

「ここ、料理がむっちゃうまいんですよ」

「ほうほう」

「本当に、うまいんですよ」

しっかりとした口調で後輩は言った。

そこまで言われると期待というものは膨らむものである。

「へー、そうなんだ。今日は、何でも好きなものを食べていいよ」

そう言って後輩にメニュー表を渡した。

「じゃあ、ぜひ食べてもらいたいものを頼みますね」

生ビールが2つ、運ばれてきた。

「すみません。肉の3種盛りと、ハツ塩焼きお願いします」

 

注文してからしばらくは、仕事の話や、プライベートな話、入社する前の話と思いつくままに語らっていた。

自分より10歳近く年下だが、話を聞いていると、その頃の自分と比べてもしっかりしてるなと感心する。

入社の動機もおぼろげで将来の展望もぼやけている自分にとって、明確な志望と形のある目標をもつ後輩は、目をそらしたくなるくらい眩しい。

そしてまた、自分と比較をするくらい年をとったことに気づかされる。10年も経てば、見映えと建前だけは立派なおじさんだ。

 

しばらくして、初めにやってきたのはハツ塩焼きだった。

「食べてみてください」

出されたとたん、後輩に促される。

「それでは・・・」

箸にとり口に運ぶ。

想像してたよりも柔らかい肉厚と、染み出てくる肉の旨み。

うまい。

「これうまいんですよ」

確かにうまい。

 

続いて登場してきたのは、3種類の赤みがかった肉の塊だった。

「きなこ豚と、地鶏のタタキ、牛肩ロースになります」

どれも、新鮮そうな食感を醸し出している。

「さーさーどうぞ」

またもや後輩に促され、箸を運ぶ。

まずはきなこ豚から。

確かにうまい。

続いて地鶏のタタキ。

普通にうまい。

最後に、牛肩ロース。

ビールによくあう。うまい。

 

量で考えると、リーズナブルとはいえない。

しかし、量を上回る質が、そこにはあった。

「確かにうまいなあ」

「うまいんですよ」

「酒は次、どうします?」

「そうだなあ・・・」

「ここ、大将が屋久島出身なんで、屋久島の焼酎がたくさん置いてるんです」

一呼吸置いて、

「うまいんです」

なんだか後輩がお店の店員か、家電量販店の営業に見えてきた。

「三岳の前割りとかどうですか」

メニュー表を指さして誘導してくる。

「前割りってのは、飲む前に水で割るのではなくて、あらかじめ割って寝かせておくんです。それで飲み口がまろやかになるんですよ」

「ほうほう」

「でも、先輩は原酒ですかね」

「いやいや、今日月曜日だし明日もあるから、軽めがいいよ」

差し出されたメニュー表を一通り眺めてみる。

「飲みやすいって書いてあるから、まずは「水の森」で」

「すみません!水の森と前割り1杯ずつお願いします!」

後輩が飲めないというのは勝手な思い込みだったようだ。

 

「ぜひ食べてもらいたいものがあるんです」

後輩は、ご飯のページを開いた。

穴子の釜飯。うまいんですよ」

頭の中で想像してみる。

「そのまま食べたあと、出汁を入れてお茶漬けで食べるともっとうまいんですよ」

頭の中のお椀に出汁を入れてみる。

「そうだな。じゃあそれ頼もう」

「すみません!穴子の釜飯お願いします!」

後輩はこの店が相当お気に入りのようだ。

もう、後輩が通販のテレビ番組の司会者にしか見えなくなっていた。

 

「釜飯は時間がかかるので、他に何か食べます?」

「そうやねー。なんにしようか?」

「うまいものがあるんです」

「もう、何でも頼んでいいよ」

「さつま揚げと南蛮漬けお願いします!」

 

釜飯より前に、揚げたてのさつま揚げが運ばれてきた。

屋久島の焼酎を飲みながら、お互い1つずつつまむ。

「うまいなあ」

「そうでしょ。ほんと、うまいんですよ」

甘そうな南蛮漬けが運ばれてきた。

飲みやすいまろやかな焼酎のアテに、交互にひとかたまりずつついばむ。

「うまいなあ」

「うまいんですよ。すみません。前割りもう1杯!」

「あ、私の分もお願いします!」

 

何度、「うまい」と言っただろう。

酔いもいい感じに回ってきた頃、穴子の釜飯がやってきた。

後輩は、慣れた手つきでしゃもじを練り回す。

「どうぞ。これうまいんですよ」

米粒と穴子と甘いタレ。

飲んで塩分を求める体にはたまらなかった。

「出汁を入れたら、またうまいんですよ」

言われたとおりにお椀に出汁を注ぎ込む。

すすっとすすると、思った以上に喉へと吸い込まれていく。

「うまいなあ」

「うまいんですよ」

 

あっというまに2時間は過ぎていった。

「いやー本当にうまかったよ」

「そうでしょ。ぜひ食べもらいたかったんです」

「ここなら、人を食べにつれてきたいし、人に紹介したいなあ」

「ぜひ今後も食べに来てください」

最後の台詞は、後輩だったか、大将だったか・・・。

 

階段を降りて1階へと降りる。

10月の夜なのに、飲んでることを差し引いても暖かい。

1階のうどん屋はもちろん営業していた。

「またよろしくお願いします」

大将に見送られ2人で駅へと向かう。

「おごってもらってすみません」

思った以上の出費だったが、それ以上の美味しさと楽しさを味わうことができた。

「今日来てよかったよ」

「また来月来ません?今日は肉を味わってもらいましたが、魚もうまいんですよ」

「そうやね。また来よう」

 

さつま揚げも南蛮漬けも穴子も魚だろ。

突っ込むことを忘れるくらい、いい気分で帰途に着いた。

 

いつもの大衆居酒屋の時間,肉,魚ではなく,ちょっといいモノを親しい人と,大切な人と,特別な時間を過ごしたい方。

屋久島のまろやかな焼酎を堪能したい方。

屋久杉のテーブルで談笑したい方。

いい店に連れてきてもらってありがとうと言われたい方。

 

弥太郎うどんの上にある博多華吉を、一度訪れてはいかがですか?

「うまい」が飛びかうかどうかは、ご自身の舌でお試しあれ。

 

https://m.facebook.com/漁師の花料理-博多華吉-772634982883168/

【私的福岡・番外編(上天草)】真の天草大王は,こいつだ!

「天草大王」というものをご存じでしょうか。

 

お酒の名前でありそうですが,違います。

神社に祭られてある神様の名前でありそうですが,違います。

 

熊本県の地鶏のことです。

もともと天草地方で飼育されていた大きい鶏の品種だったそうですが,一時期絶滅してしまい,その後関係者の努力により復元され,今に至る鶏だそうです。

肉質がよくて美味しいんです。

天草地方の大きい鶏だからか,天草の名品種だからか,そんな名前がついたのかもしれません。

 

でも。

上天草への旅行で,私は見つけてしまいました。

真の「天草大王」を。

 

 

それは,天草五橋を渡ってから松島総合運動公園に行く途中,車でそれほど遠くないところにありました。

 

日曜日の午後2時過ぎ,お店の前に到着すると,入り口の門の横に大きな門番が立っていました。

保育園児の子どもからは見上げるほどの大きさです。

 

「なんだこれ?」

子どもがボコボコと触りつつ,尋ねてきます。

ああ,まだ知らないのか。

お店の名前にもなっているそいつは,ニヤニヤと来客者を見つめています。

あと一ヶ月もすれば,デパートやスーパーなどにもどこからともなく湧きだしてくるでしょう。

 

触られてふわふわと揺れるそいつを置いて,お店の中に入っていきました。

お店の中はそれほど大きくなく,入り口から目の前がレジ兼ショーウインドウで,その横にたくさんの商品が並んでいました。

 

「いらっしゃいませ」

お店のご主人とおぼしき人がカウンター越しに声をかけてきました。

 

「天草●●ください」

私は単刀直入にお店のご主人に告げました。

 

すると,

「これですけど,いいですか?」

と,ショーウインドウの下の方の商品の外箱を差して確認してきました。

それは単に注文の確認ではなく,本当にこいつを買う気があるのか,真意を確かめているように私には思えました。

 

「そうそう,それです。」

ろくに確認もせず,私はお店のご主人に告げました。

 

「どちらからお越しで?」

「福岡です」

「福岡! それはまた……」

お店のご主人は驚いて,

「それなら,ケースをご用意しないと」

後ろの方から,たいそうなケースを取り出してきました。

 

ええっ!

そんなケースがいるの?

ここでさすがの私も,ことの重大さに気づきました。

ですが,ここまできてやめるわけにはいきません。

 

「ケース代が別途かかりますが」

「全然,問題ありません」

もはや,金額のことなどどうでもよくなっていました。

 

あれ,持って帰ってどうしよう。

あれ,お店の外に止めている車で待っている妻に見せたら何て言うだろう。

ちょっと不安になりました。

 

お店のご主人がショーウインドウから取り出し,ケースに格納しました。

しっかりと蓋をして,周りをガムテープでぐるぐる巻いて,完成です。

 

「●●円になります」

言われた金額を用意し,お店のご主人に渡しました。

 

「はい,どうぞ」

レジの横からケースを渡されました。

想像を越える重さ。

 

左脇に抱えつつ,お店を出ようと,ドアのノブに手をかけたところで

「ケース,とっといてください。また使えますから」

と,お店のご主人の声。

うーん……。また,上天草に来ることがあってもこいつを買うかなあ……。

 

振り向き様に軽く会釈をしながらお店の外に出ました。

車に戻るやいなや,妻のするどい突っ込みが入りました。

「うわ,なんそれ」

ですよね~。

 

上天草にお住まいの友人から教えてもらったパンフレットで知った「こいつ」は,誌上で見るのと実際に見るのでは比べ物になりませんでした。

 

他の荷物のように後部座席におけるものではないので,後ろの荷台にどんと乗せ,福岡へ帰ることにしました。

 

 

帰る途中,夕食を食べたり温泉に入ったり寄り道したので,自宅へ帰りついたのは,午後9時過ぎでした。

荷下ろしをして,最後に家の中へ持ち込んだのはやっぱり「こいつ」。

 

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持って帰りケースから取り出したものの,冷蔵庫にいれようとするとやっぱり「こいつ」は入りません。

しょうがない。夕食も食べたけど,食べるか。

 

外箱から中身を取り出してみると,その大きさと重さに衝撃を受けました。

いくらなんでも,これをこのまま売るなんてやりすぎだ。

これこそが,真の天草「大王」じゃないか。

 

ここまで文字で綴ってきましたが,視覚で体感していただいた方がいいかもしれません。

ということで,真の天草「大王」をどうぞご覧ください。 

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「こいつ」だけではわかりにくいかもしれません。

なので,フォークと皿を一緒に並べた写真もどうぞ。ついでに左上にあるのがチョロQです。

 

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大きいです。かなりの大きさです。

上天草市松島町にある「パンプキン」で売ってある「こいつ」は,ご覧のとおりの長さで50センチくらいあります。

九州各地のロールケーキを食べてきた私も,これほどの長さのものに出会ったことがありません。

普通のロールケーキの軽く3倍あります。

これで1600円くらいなので,かなりリーズナブルです。

ケースの発泡スチロールも200円くらいで売っていましたが,この長さだと他の用途への転換はそうできそうにもありません。

 

気になるのが,味。

量より質か。質より量か。

規格外だとどうしても二元論で語ってしまいたくなりますが,心配無用です。

カステラとスフレの中間のような生地に,甘いクリーム。

長さとか抜きにして,普通に美味しいです。

冷やすとクリームの甘さがさらに引き立ちます。

 

私と妻と子ども3人で食べましたが,食べても食べても,減りません。

とりあえず,横にしたら冷蔵庫に入る長さまで食べたところでその日は終了しました。

そのあとも,結局4日間食べ続けることになりました。

 

旅路の帰りでお金がつきてしまい,費用対効果の高いお土産を望んでいる方に。

一人で腹一杯ケーキを食べたい方に。

渡す人にとりあえず驚いて欲しい方に。

「こいつ」はいかがでしょう。

 

で,何の話をしていましたっけ?

そうそう,天草大王の話でしたね。

 

それではお教えしましょう。

真の「天草大王」とは,パンプキンの「天草ロール」のことです(たぶん)。

【私的福岡・番外編(上天草)】甘いモノには,トゲがある。

仕事でも。プライベートでも。

美味しい話には,必ずと言っていいほどトゲがあります。

魅力的な名前や見た目に夢中になっていると……ぶすっ,みたいな。

 

植物や動物でもそうですね。

甘い匂いで引寄せて,落ちたら最後ぱくっとウツボカズラ

いかがわしい光で引寄せて,近づいたら最後ぱくっとチョウチンアンコウ

近づいたら終わりです。

 

気を付けておきながら,トゲに刺されてきました。

上天草で。

 

 

上天草を旅行中,公園のほかに子どもたちをどこに連れて行こうかなと考えていました。

Google先生に尋ねたところ,ちょうどよさそうな名前がすこんとヒットしました。

それは四号橋からも見てとることができるようでした。

レストランやお土産店が軒を連ねるおしゃれな施設,リゾラテラスの奥の方。

 

 

わくわく海中水族館シードーナツ。

見た目もまん丸いので,ドーナツという名前がついたのでしょう。

天草五橋から眺める天草の海はとても綺麗で壮大です。

水族館は福岡にももちろんありますが,美しい天草の海の中の生物を間近で見ることができるのはきっとここだけでしょう。

海中一杯に広がる円形のガラスの向こうには,ゆうゆうと泳ぎ回る魚たち。

水上から覗き込めば,寄ってくる人懐っこい魚たち。

想像するだけで大人の私もワクワクしてきました。

子どもたちも,水族館ならきっと喜んでくれるに違いありません。

 

甘い期待を抱いて,入場ゲートをくぐりました。

そんな考えは一瞬で消えました。

 

入ってみると,水族館本体が遠いところにあるのがわかりました。

円形の物体は,お金を払った入口から,子どもを連れた足で10分はかかりそう。

 

まあいいやと思っていると,道の先からブロロロロロ……と,原付の音。

近所のデパートで日曜日に動いているような,運転席とけん引される荷台の,汽車の形をした車がやってきました。

そうかそうか,これに乗って行くのか。

 

乗り込もうとすると,

「1人100円になります」

と,可愛らしいお姉さんの一言。

もちろんお支払しますとも。

 

私たち家族を乗せて,汽車の形をした車は海中のドーナツへと向かっていきました。

道中,何組かの観光客とすれ違いつつ,道の途中に置かれた展示物を止まることなく無視して通り過ぎつつ,あっという間に終点が見えてきました。

 

終点に差し掛かったところで,お姉さんが左にハンドルを大きく切ったのに呼応して,汽車が大きく左に曲がったかと思うと,すぐさま右に切られたハンドルに従い,汽車も即座に右に曲がった結果,ちょうど反転して止まりました。

魚を見る前に,このすごく狭いスペースの中で何事もなく汽車を反転させる絶妙なテクニックのお姉さんに,私はいたく感動しました。

 

汽車から降りてみると,海上に浮かぶドーナツへと続くための橋がもう眼の前にありました。

興奮して橋の上を走る長男を追いかけてドーナツへと向かいます。左右を見渡せば,天草の海。やっぱり綺麗です。

橋を渡り切り,ドーナツの上に乗りました。

 

さあ,鑑賞の始まりです。

順路に従って歩いていると,柵に取り付けられた一枚のボードが目に入りました。

書いている内容を見てみると,海中に落ちたモノの一覧表のようです。

帽子,スマホ―,バッグ……と,みんな結構落としてるなあと思っていたら,「3歳男児」の文字。

えっ,人?

しかも,1人だけでなく小学生など含め2~3人の記載。

さらに落ちたモノの横の項目を見ていくと,落ちた状況に続いて,落ちた感想やら反省の弁の記載欄。

うわ。

気づいてしまいました。

ここは,普通の水族館ではないことに。

 

気を取り直し,順路を進むことにしました。

橋を渡って右に進んでいくと,海の下へと続く階段がありました。

なんだか手作り感満載の飾りと怪しげなライトが誘う階段を一歩ずつ降りていきます。

降りた先にあったのは,天草の海……ではなく,アジアの海。

一周まわって後々気づいたのですが,この施設は「天草」で「世界各地」の海の生物を展示する施設でした。

 

天草の魚はいないの?

安心してください。

ところどころ壁にあいている穴の窓の向こうは,まぎれもなく天草の海でした。

ぼーっとしばらく覗き込んでいると,魚が顔出してはすぐに消えていきました。

一瞬でもいいじゃないですか。ちゃんと天草の魚はいました。

ですがどう考えても,展示のメインは世界の魚のようです。

 

展示されていた魚は見たことないものばかりでした。

目が退化してなくなってしまったけれど,形も動きもやっぱり魚で不気味な「ブラインドケープカラシン

幽霊みたいな背びれを波打たせて動くこれも不気味な魚「ブラックゴースト」

本家と並んで展示され形だけでなく味も比較される残念な「スッポンモドキ

 

展示の説明も見たことないものばかりでした。

職員の方が自分でペンで書いたものから,ペンキでボードに書きなぐったものまで,情熱溢れる文字。

特徴などよりも美味いかまずいかを優先するコメント。

海中にわざわざ神社を作ってウツボを奉っているにもかかわらず,祈るより食った方がいいと締める解説。

 

展示の仕方も見たことないものばかりでした。

「恐怖の毒針」「触らないでください」と書いておきながら,ふたもせず思わず触りたくなるような絶妙な位置に展示してあるガンガゼ

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10種類くらいの生物を並べて総選挙と称して投票を迫るコーナー。

 

他にもありましたが,夢中になってしまい記録としてあまり残していません。

気づけば展示を見ただけで1時間が過ぎていました。

 

そのほかにも,1階部分ではたった100円で山ほどえさやりができたり(水中落下に注意),2階部分では強毒だけど美味しさを強調する魚たちが展示されていたり,三号橋・四号橋を含め遠くまで眺めることができる展望デッキなどがあります。

 

結局,全部で2時間近く滞在しました。

子どもも「今日の水族館楽しかった」と満足のようでした。

 

わくわく海中水族館シードーナツ。

そのなんとなく可愛らしい名称と形の中に,あっと驚くトゲがあなたを待っています。

ぶすっ,とね。

【私的福岡・番外編(天草)】君に会いにきた。 ~わずか20分間の逢瀬~

 もう10年以上の前のことです。

雑誌で何かキャッチコピーの公募があり,うろ覚えですがその大賞が,

「2時間の電話よりも10分間会いたい」

みたいなやつでした。

 

遠距離恋愛を経験した身としては,わかるなあと思いつつ,それはそれで大変だなあとも思います。

これだけネットが発達して,今では電話による声だけでなく,カメラ越しに液晶画面を通して姿まで伝わるようになりましたが,やっぱり直接会う方が数倍も感覚的に「一緒にいる」「思いが伝わる」ような気がします。

その場にいることが,なんだかんだいって一体感や,大袈裟にいえば生きている実感を体験できるんですね。

 

ということで,私も会いにいってきました。

片道約1時間もかけて。

決して安くはないお金をかけて。

ひょっとしたら会えないかもしれないのに。

最長でもたった20分間しか会えないのに。

 

 

野生のイルカを見に,天草は五和町の沖にクルージングに行ってきました。

 

 

五和町沖の野生のイルカウォッチングには,大きく分けて2つのルートがあります。

天草諸島の下島にある天草市五和町の港からクルージングするか。

天草諸島の上島にある上天草市松島町の港からクルージングするか。

 

場所からいって,五和町からの方が断然近いのですが,九州本島から車で行くとなると,上島を渡りきって下島にいかないといけません。

天草五橋からでも1時間はかかります。

 

一方,上天草市松島町からは天草五橋の四号橋の麓から出向するので,車での移動距離はほとんどありません。

ただし,2時間あるクルージングのうち,片道50分かけて行って20分滞在したあと,また片道50分かけて戻ってくることになります。

どうやら五和町からの方が滞在できる時間は長いようです。

 

当初,五和町まで行ってイルカに会いに行くことを計画していました。

前日の夜,子ども(兄)にこの船でイルカに見に行くんだよ~と見せていると,

「その船だと私と子ども(妹)が酔いそう」

との妻の一言。

そこまで計算にいれていませんでした。

 

実際にはどのくらい揺れるのかわからないのですが,少しでもリスクを減らそうと思い,松島町から出ているクルーザーに乗ることにしました。

大きめの船ですが,その分,五和町から行く場合に比べて料金もほぼ倍に。

ですが,家族全員で楽しくイルカを見るためなら必要経費です。

 

 

当日は天気もよくてクルージング日よりでした。

クルーザーも定員いっぱいになるくらい多くの観光客で溢れていました。

野生のイルカなので必ず会えるとは限らないのですが,98パーセントの確率で会えるそうです。

 

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出港してすぐ四号橋の下をくぐり,大海原へと旅立ちます。

吹き抜ける風が気持ちいい。

を通り越して,クルーザーのスピードが想像以上に速く,吹き抜けるというよりも叩きつける風に目をすぼめてしまいます。

それでも,流れる天草諸島の景色を眺めたり,普段は行けないクルーザーの2階に登ったりして遊んでいるうちに,赤い灯台が目印の目的地が近づいてきました。

 

いよいよ会えるのだ。

 

目的地を見渡すと,遠くからでもたくさんいるのがわかりました。

 

 

イルカウォッチングにきた船の集団が。

 

10数隻でしょうか。

船上に赤いライフジャケットを来た観光客をたくさん乗せた小型の船が,海上の1か所を囲むようにして海にぷかぷかと漂っています。

 

そうかと思うと,ずどどどどどと,突然けたたましいエンジン音が穏やかな波の上を鳴り響き,船が一斉に動き出しはじめました。

その先には,数頭のイルカの群れ!

 

私たちが乗るクルーザーも船の中に飛び込み,イルカを追っていきます。

周りを囲まれ,後ろから追われていることを少しも気にすることなく,イルカは群れをなしてすらすらと前進していきます。

現れて20秒ぐらいしたところで,急にいなくなりました。

「イルカは,1,2分ぐらい潜って呼吸するときに海上に出てくるんです」

とガイドさんの説明。

 

おいおい,そうすると滞在する20分のうち,実際に会えるのは10分もないじゃないか。

心のなかでそう呟きつつ,イルカが現れると,たちまちカメラを向けるとともに,子どもにイルカの場所を指差しで教える私。

 

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初めて野生のイルカを見たためか,現れては消え,また別の場所現れるイルカに興奮したためか,終始子ども(兄)は喜んでいました。

 

それにしても,船頭さんがすごい。

狭い空間のなか,他の船にぶつかることなく,イルカを見つけるやいなや,切り返し,回り込み,船と船との間を差し込んでいく様は,それはそれで見物でした。

 

約束の時間はたちまちやってきます。

「あともう一度見たら戻ります」

ガイドさんの声が船上に響きます。

 

船の上は,どこからイルカが現れてくるか海上をにらめつける眼でいっぱいでした。

船が急に動き始め前進します。

「あ,そこだ!」

子どもが叫んだ先,私たち家族が陣取っている席の前にイルカの群れが現れました。

今までで一番近い。

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多くのイルカたちが,船と並行して泳ぎ,やがて海中へと消えていきました。

 

予告どおり,エンジンが大きな音をあげはじめ,徐々に加速していくクルーザー。

人生で初めての20分間は,あっという間に終わりました。

 

 

帰りの船中は,行きの風景とは全く異なり静まり帰っていました。

遊園地で遊び疲れて眠る子どもたちのように。

別れを告げられその場に一人置き去りにされた恋人のように。

容赦なく叩いてくる風と速度を上げるエンジンの音はともかく,こきざみな揺れは多くの大人の眠りを誘っているようでした。

 

 

50分をかけて港に戻り,船を降りたところで

「あー楽しかった」との声。

船に乗ることも含め,初めての体験に子どもは満足な様子。

 

じっくりとイルカを見るなら,芸達者な動きを見るなら,水族館の展示やショーを見る方がいいでしょう。

正直,野生のイルカは短い時間しか現れませんし,人間のことなど考えない本来の動きしかしません。

それでも群れでゆうゆうと泳ぎ,潜ってはひょっと現れる姿は,見るものの心をおだやかに,時に興奮とともに揺さぶってくれます。

 

せっかく天草まで来たのなら,

20分間だけでも彼らに会いに行ってみませんか。 

【私的福岡・番外編(上天草・宇土)】子連れ旅行に必要な,観光地でないもの

熊本地震で観光客が減っているという話を聞き,応援の意味もこめて熊本県上天草市に旅行に行ってきました。

 

さて,天草と言えば何でしょう。

天草と聞いたら,何を思い浮かべるでしょうか。

 

歴史でいえば,島原の乱天草四郎でしょうか。

学校で習う教科書に今でも出てくると思いますが,彼に関する観光施設がたくさんあります。

景勝でいえば,天草五橋でしょうか。

複数の島を連続的に結ぶ天草五橋は通っても,遠くから眺めてもいい景色を体感できます。

食事でいえば,エビでしょうか,天草大王でしょうか。

ホテルで食べても,幹線道路に軒を連ねるお店で食べても,おいしさこの上なし。

 

他にも,海上で野生のイルカウォッチングをしたり,吹き抜ける風が気持ちいいクルージングをしたり,観光地として遊ぶことができます。

もちろん,1日中遊び疲れた後の温泉だってあります。

 

眺めてよし遊んでよし食べてよし浸かってよし,の天草です。

 

こう聞くと,旅行に行くのを考えるだけで楽しみです。

旅行の1週間前になり,どこに行こうか,何をしようか,どんなものを食べようかと考えていました。

観光協会のウェブサイトを覗いたり,上天草在住の人におすすめの場所を尋ねたり,ゆかりのある人からニッチな情報をもらったりして,3日前にはだいたいのプランができあがりました。

しかし,肝心なものが決まっていませんでした。

それは,我が家が旅行に行く場合,どこに観光に行くか,どんなものを食べるのか,どこに泊まるのかということよりも,まず優先して決めなければならないことです。

けれども,人に聞いても,旅行会社でもらったパンフレットを見てもあまり出てこない。

 

まいったなぁ。どうしようなぁ。

 

そう思いながら,2日前になりネットサーフィンをしていてようやく見つけました。

住所からgooglemapで位置を割り出し,航空写真で全体像を確認します。

よかった。これで満足のいく旅行に違いない。

 

保育園児の子どもたちが遊ぶことができる公園を見つけ,私はほっとしました。

 

観光や旅行というものは,ほとんどの場合ターゲットが大人だと思います。

若い人向け,高齢者向けといった年齢別の指向はあると思いますが,基本的には大人,若くても中高生以上を主眼に置いているのではないでしょうか。

もちろん,阿蘇ファームランドなどのように,小さな子どもも遊べるような施設もありますが,絶対数としては少ないと思います。

保育園児が行っても退屈しそうにない施設はそうありません。

 

我が家の場合,景勝地や神社・仏閣が好きな私と,グルメ・温泉があればいい妻と二人の希望だけで予定を立ててしまうと,子どもが楽しめるポイントがありません。

子ども向けの科学館のような施設に行っても,小学生ぐらいが対象のためかあまり夢中になることなく,早く旅館に行って布団の上で枕投げや相撲をしたいと言ったりすることもありました。

 

子どもが遊べる施設でどこにでもあるものといえば,遊具のある公園がすぐに思い浮かぶでしょう。

我が子は遊具や体をつかった遊びが好きなので,公園に行くというと喜んでくれます。

おそらく,大多数の保育園児もそうだと思います。

 

そういうわけで我が家では,旅行先の近くにある遊具のある公園を探して,日程にまず組み込むようになりました。

 

でも,これって,もったいない気もしないわけではありません。

遊具で遊ぶことなんて,いつもの公園でできるじゃないか。

わざわざ遠出してまで普段と同じことするのは,時間がもったいないんじゃないか。

観光地でしかできないことをした方が,有意義なんじゃないか。

 

子ども目線ではともかくとして,親目線ではそう思うこともあります。

しかし,実際に行ってみるとそうでもないことがわかります。

 

遊具の種類といえば,何があるでしょう。

滑り台,シーソー,ブランコ,アスレチック…頭にすぐ浮かぶものは少ないかと思います。

ですが,実際に自分の住んでいる場所以外の公園に行ってみると,いつもの公園との違いに気づきます。

滑り台と言っても,高さや長さも違いますし,ローラー式なのか,直線なのか,複数回段差があるのかと種類も形状も違います。

シーソーも,1人乗りの単純なものから,親と一緒に乗るもの,縦方向だけでなく横に回転するものもあります。

アスレチックに至っては,もう場所ごとに全く違います。

これらのもの以外にも,ターザンロープ,ボルタリング,草スキー,迷路,トランポリン……などなど。

子どもも普段とは違う遊具に興奮を覚えるでしょうし,時間帯によっては,地元の子どもたちも遊んでいて一緒に遊んでしまうかもしれません。子どもが退屈することはまずないと思います。

私たち親も見慣れない遊具に興味を覚え,子どもたちと一緒に楽しむことができるでしょう。

 

この旅行で我が家が訪れたのは,上天草市にある松島総合運動公園と,宇土市にあるつつじヶ丘公園でした。

松島総合運動公園の遊具施設は,大きなアスレチックのほか,回転式シーソーや,タイヤのターザンロープ,幼児用ブランコや小さなトランポリンがあります。その周りが芝生になっていて,フリスピーやキャッチボールもできます。

 

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つつじヶ丘公園の遊具施設は,2つのアスレチックのほかは,滑り台と回転式シーソーだけでしたが,滑り台は全部で4つあり,そのうちの1つは高さも長さもあって,地元の子どもたちもはしゃいでいました。

 

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たかが公園。

されど公園。

 

旅行先の地元の公園で遊ぶのも,新たな観光として考えてもいいのかもしれません。

【私的福岡】ちょっとのあいだ音信不通だった友と会って楽しんできた。

小学校、中学校、高校、大学、就職、結婚、育児……と続く人生の中、日々つきあう人は次々と変遷してきた。

 

今でも親密に関係している人もいる一方で、ステージが変わる途中で疎遠になった人も数知れずいる。なかには、この先住む場所も職種も違うけれど、一生つきあっていくことになるだろうと思っていた人もいたが、SNS上からも姿を消し、メールを送っても返信がこなくなってしまった。

 

かと思えば、高校卒業して10年会っていなかったのに、どこから知ったのか知らないはずの私のメールアドレスに連絡をくれて、いま福岡で働いているから飲みに行こうと誘ってくれたかつての友人もいる。

 

人が常時親密に関わっていける人数の上限は、100人とも200人とも言われているが、多いようでいて案外少ない。

 

 

そんな数少ない、しばらく会っていなかった友に、久しぶりに会ってきた。

 

私と友のはじまりは、先輩の紹介からだった。

数年前、日付が変わるまで続く連日の残業でへとへとだったころ、夕飯でも食べに行かないかと言われ、ついていった先が、友の店だった。

友の店は、天神のど真ん中にあったにもかかわらず、それまで私は存在すらも認識していなかった。

 

初めてあったときのことは今でも覚えている。

友は見た目もがっつりとしていて、中身もヘビーなやつだった。

かといって、とっつきにくいわけでもなく、人をとりこにさせる魅力を持っていた。

それからというもの、先輩を介さずとも、残業が長引く日は友の店によく食べに行った。

後輩ができてからは、私が連れていって友を紹介することもあった。

 

月一回は必ず会いにいっていたのだが、昨年、私が職場が異動になってしまい、友の店に通うことができなくなってしまった。

一度だけ、本社で行われる研修に参加したとき、昼休憩時に食べに行ったことがあったが、そのときは特に変わった様子もなかった。

 

しかし、忙しかった年度末を無事乗り越え、ゴールデンウィークが終わり落ち着いた頃、所用で本社に向かったときに、友の店がなくなっていることに気づいた。

その瞬間、私の心に小さいけれどぽっかりと穴が空いてしまった。

 

いつもそうだ。

なくなってから気づくのだ。

わかっていたなら、もっと会いにいっていたのに。

別れも言えないまま、行方も知らないまま。

連絡先も知らないのだ。

もう友の姿を見ることはないだろう。

 

そう思っていた矢先のことである。

 

Facebookのタイムラインをぼーっと読みつつフリックして読み飛ばしていると、見たことのある文字が目に留まった。

 

友の名前が、そこにあった。

まさかとは思ったが、間違いなかった。

連絡先も知らなかったのに、近況をしることができるなんて、SNSが発達した現代でなければ無理だろう。

この時ほど、Facebookの記事を見て興奮したことはない。

友の所在地をメモした私は、早速、行ってみることにした。

 

友の新しい居場所は天神から少し離れており、私の職場からはとても昼休憩中に行けるような場所ではなかった。

 

使っていなかった夏休みをとって、友の店へと向かった。

地下鉄でたった3駅の距離であるが、今まで降りたことのないところだった。

 

地下鉄を降り、地上にあがってから数分歩くと、友の店があった。

また会えるという喜びと、外にいても待ち遠く感じる楽しい時間。

一方で、久しぶりのことからくる緊張。

 

私はゆっくりと重い扉を開けた。

 

友は、なんにも変わっちゃいなかった。

がっしりとした体格。ずっしりと言わせる中身。

それでいて、包み込んでくれる優しさ。

 

今なら面と向かって言える。

ああ、私は友のことが好きなんだ。

 

友楽のカツ丼が、一番好きなんだ。

 

 

天神で数十年営業してきた友楽は、再開発によるビルの取り壊しにより他の店舗と同様に閉店していた。

もう食べることができないんだなと残念がっていたのだが、先日、移転オープンしたとの記事を目にして、早速いってきた。

 

天神南駅から3駅の薬院大通駅から1番出口を出て歩いて少しのところに、新しい友楽のお店はある。

城南線を北に入れば、すぐに落ち着いた雰囲気のある住宅街である。マンションの一階にならんである飲食店も、天神のお店に比べておしゃれな雰囲気を醸し出している。

そういう影響もあってか、友楽の外観もこれまでの赤煉瓦とは異なり、白と木目調を基調とした落ち着いた雰囲気である。

 

入ってまず驚いたのは、外観に引き続くおしゃれさと明るさ。

以前のお店では、うどんやでよく見かけるようなテーブル席に店先にでかえかと迎え撃つ券売機が印象的だったが、新しいお店はカウンターが10席くらいほど。券売機もなくなっている。

 

午後1時前だったが、カウンターはほとんど埋まっている。私は入ってから左の端っこに座る。

メニューはカツ丼単品か汁物つきの二種類のシンプルで、大盛りにしても値段が変わらないことも含めて以前と変わっていない。

 

注文してしばらくして出てきたカツ丼は、茶碗は変化しているものの、中身は変わらぬままのボリュームと味付けである。

 

糸島豚のジューシーな肉厚は、歯をたてれば旨味がじゅわっと染み出てくる。

煮込まれた出汁はカツに負けないほど少なめだけれどもその分濃厚で、ご飯に浸せばそれだけでも味わうことができる。

それらを一緒にとじられた卵がやさしい味でまろやかさを添えてくれる。

くわえてあっさりとした味付けの豚汁

変わったのは、食べ終わる頃に出てくる八女茶。

膨らんだお腹に落ち着きを取り戻してくれる一杯である。

 

周りから聞こえてくる会話を聴いていると、どうやらみんな新聞やらネットやらで移転の情報を入手してやってきているようだった。

 

「わざわざありがとうございます」

移転を知って訪ねてきたことを告げると、女将は笑顔で答えてくれた。

 

以前と変わらぬ味。

友のためだけに、また来よう。

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【福岡妄想日記・博多】ある地下室でのサービスタイム(3/3)

甘美な世界はさらに続く。

私の指は、次に左手に用意された脚へと向かった。

先ほど堪能したものよりは幾分か小柄であったが、それでも私を満足させてくれるものに違いなかった。

手に取り、指に力を入れ、まとっていたものを思いのままに破き、素のままを先から太い方へとしゃぶりついていき、あふれる快楽にふける。

1つ、また1つ。そしてまた1つ。

私は、無言のまま休むことなく次々と味わっていた。

顔をあげると、時計の長い針が一周しかかっていたところだった。まだ時間はある。

そう思ったところで、右の女性が差し出してきた。

「手も、よかったら、どうぞ」

「いいの? ありがとう」

私は差し出された手を遠慮なく受け取った。

脚と同じように、指先から腕の方へと順番に口へと持って行く。

舌で触れる感触は脚とは若干異なるものの、漏れだす液体の味は変わらず私をとりこにした。

あっという間に、終わりの時間を迎えようとしていた。

さすがに、心も体も満ち足りてきた。

用意されていたタオルで手を拭うも、タオル自身がべとべとしていて、手にまとわりつく臭いと粘りはなかなか取れなかった。

周りの女性たちも、同じような感じだった。

一息ついていると、左の女性が言った。

「まだ残ってますよ」

脚も手も味わった後に残るのは……身体。

正直、私はもう満足していた。が、せっかく準備してくれたのだ。

昔から、据え膳食わぬは男の恥というではないか。

差し出された身体を引寄せていると、傍に置いてあった道具に目が向いた。

突起が二つある棒のようなものだった。

私は、その棒を右手に取ると左手で抱えた身体にあてがい、目標の場所を探した。

棒伝いに柔らかさを感じたところで、それを押し込む。

奥まで届いたところで、抜き出す。

2、3度繰り返して、出てきたものをすする。脚や手のそれとは違うが、この癖のある味も好きだ。

悔いのないように、出てこなくなるまで作業を続けた。

サービスタイムが終了した。

私も含め、周りの女性たちも十分満足したようだった。

私達はここでようやく、日々の生活やとりとめのない会話を始めた。

そうやって余韻に浸っていたところだったが、もう時間がきてしまった。

妻と約束した時間が迫っていた。子どもも待っているに違いない。

会計を済ませ、地下室から地上へと戻ってきた。

すっかり日は落ちてしまったが、街中には生温かい熱気が残されたままで、不快感が押し寄せてくる。

けれど、私はとてつもなくすっきりしていた。

私は振り返り、見送る4人の女性たちにお礼と別れを告げ、帰り道を急いだ。

金曜日の夜の島は、ネオンと笑い声の下、多くの酔客で賑わっていた。

それにしても、満足な90分だった。

 

こうして、以前の職場の同僚と訪れた、中洲にある90分のカニ食べ放題は終わった。

【終わり】