実践行動分析学「あと5分」(5/7)
解決策は,5分前に「あと5分したら歯磨きする」というものである。
「歯磨きするよ」という呼びかけに対し,遊べなくなるため「あと5分」と言うのであれば,「あと5分したら歯磨きする」と言えば,呼びかけた際に遊べなくなるわけではない。したがって,「あと5分」と言わなくなると思った。
早速試してみると,大きな落とし穴が。
「あと5分したら歯磨きする」と言うと,見込み通り「あと5分」ではなく「うん」と言った。しかし,5分後に歯磨きをしようとすると「あと5分」と言う言葉が出てきたのである。
なぜ上手くいかなかったのか。
以前書いたように,行動はその行動の「直後」の結果によって制御される。その「直後」というのは,60秒以内を差すようだ。
よくよく考えると,「あと5分」と言う行動が強化されるのは,私の「歯磨きする」という呼びかけによるのではなく,子どもにとって遊びがなくなることである。つまり,「あと5分」と言うのは,私との「5分後に歯磨きする」という「ルール」ではなく,あくまでも実際に歯磨きをすることによりその「直後」に遊べなくなることとの関係の問題なのだ。
【直前】 → 【行動】 → 【直後】
遊びあり → 「あと5分」と言う → 遊びなし
ここでの私の「あと5分したら歯磨きする」という発言は,一種の「ルール」であり,これに基づいて行われる行動を「ルール支配行動」という。人の行動は,行動の「直後」の結果によって制御される,いわゆる随伴性に基づく行動以外にも,こういったルールに基づく行動もあるとされる。
今回の場合,私の行為はルールに基づく行動を導入しようとしたことになるが,「あと5分」と「遊びなし」の随伴性の影響力の方が強く,「あと5分」が維持されたものと考えられる。
ということで,思いついた介入は失敗に終わった。どうしたものか。