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ZIG ZAG WALK

おもしろきことは,よきことなり。

【私的福岡】ちょっとのあいだ音信不通だった友と会って楽しんできた。

私的福岡

小学校、中学校、高校、大学、就職、結婚、育児……と続く人生の中、日々つきあう人は次々と変遷してきた。

 

今でも親密に関係している人もいる一方で、ステージが変わる途中で疎遠になった人も数知れずいる。なかには、この先住む場所も職種も違うけれど、一生つきあっていくことになるだろうと思っていた人もいたが、SNS上からも姿を消し、メールを送っても返信がこなくなってしまった。

 

かと思えば、高校卒業して10年会っていなかったのに、どこから知ったのか知らないはずの私のメールアドレスに連絡をくれて、いま福岡で働いているから飲みに行こうと誘ってくれたかつての友人もいる。

 

人が常時親密に関わっていける人数の上限は、100人とも200人とも言われているが、多いようでいて案外少ない。

 

 

そんな数少ない、しばらく会っていなかった友に、久しぶりに会ってきた。

 

私と友のはじまりは、先輩の紹介からだった。

数年前、日付が変わるまで続く連日の残業でへとへとだったころ、夕飯でも食べに行かないかと言われ、ついていった先が、友の店だった。

友の店は、天神のど真ん中にあったにもかかわらず、それまで私は存在すらも認識していなかった。

 

初めてあったときのことは今でも覚えている。

友は見た目もがっつりとしていて、中身もヘビーなやつだった。

かといって、とっつきにくいわけでもなく、人をとりこにさせる魅力を持っていた。

それからというもの、先輩を介さずとも、残業が長引く日は友の店によく食べに行った。

後輩ができてからは、私が連れていって友を紹介することもあった。

 

月一回は必ず会いにいっていたのだが、昨年、私が職場が異動になってしまい、友の店に通うことができなくなってしまった。

一度だけ、本社で行われる研修に参加したとき、昼休憩時に食べに行ったことがあったが、そのときは特に変わった様子もなかった。

 

しかし、忙しかった年度末を無事乗り越え、ゴールデンウィークが終わり落ち着いた頃、所用で本社に向かったときに、友の店がなくなっていることに気づいた。

その瞬間、私の心に小さいけれどぽっかりと穴が空いてしまった。

 

いつもそうだ。

なくなってから気づくのだ。

わかっていたなら、もっと会いにいっていたのに。

別れも言えないまま、行方も知らないまま。

連絡先も知らないのだ。

もう友の姿を見ることはないだろう。

 

そう思っていた矢先のことである。

 

Facebookのタイムラインをぼーっと読みつつフリックして読み飛ばしていると、見たことのある文字が目に留まった。

 

友の名前が、そこにあった。

まさかとは思ったが、間違いなかった。

連絡先も知らなかったのに、近況をしることができるなんて、SNSが発達した現代でなければ無理だろう。

この時ほど、Facebookの記事を見て興奮したことはない。

友の所在地をメモした私は、早速、行ってみることにした。

 

友の新しい居場所は天神から少し離れており、私の職場からはとても昼休憩中に行けるような場所ではなかった。

 

使っていなかった夏休みをとって、友の店へと向かった。

地下鉄でたった3駅の距離であるが、今まで降りたことのないところだった。

 

地下鉄を降り、地上にあがってから数分歩くと、友の店があった。

また会えるという喜びと、外にいても待ち遠く感じる楽しい時間。

一方で、久しぶりのことからくる緊張。

 

私はゆっくりと重い扉を開けた。

 

友は、なんにも変わっちゃいなかった。

がっしりとした体格。ずっしりと言わせる中身。

それでいて、包み込んでくれる優しさ。

 

今なら面と向かって言える。

ああ、私は友のことが好きなんだ。

 

友楽のカツ丼が、一番好きなんだ。

 

 

天神で数十年営業してきた友楽は、再開発によるビルの取り壊しにより他の店舗と同様に閉店していた。

もう食べることができないんだなと残念がっていたのだが、先日、移転オープンしたとの記事を目にして、早速いってきた。

 

天神南駅から3駅の薬院大通駅から1番出口を出て歩いて少しのところに、新しい友楽のお店はある。

城南線を北に入れば、すぐに落ち着いた雰囲気のある住宅街である。マンションの一階にならんである飲食店も、天神のお店に比べておしゃれな雰囲気を醸し出している。

そういう影響もあってか、友楽の外観もこれまでの赤煉瓦とは異なり、白と木目調を基調とした落ち着いた雰囲気である。

 

入ってまず驚いたのは、外観に引き続くおしゃれさと明るさ。

以前のお店では、うどんやでよく見かけるようなテーブル席に店先にでかえかと迎え撃つ券売機が印象的だったが、新しいお店はカウンターが10席くらいほど。券売機もなくなっている。

 

午後1時前だったが、カウンターはほとんど埋まっている。私は入ってから左の端っこに座る。

メニューはカツ丼単品か汁物つきの二種類のシンプルで、大盛りにしても値段が変わらないことも含めて以前と変わっていない。

 

注文してしばらくして出てきたカツ丼は、茶碗は変化しているものの、中身は変わらぬままのボリュームと味付けである。

 

糸島豚のジューシーな肉厚は、歯をたてれば旨味がじゅわっと染み出てくる。

煮込まれた出汁はカツに負けないほど少なめだけれどもその分濃厚で、ご飯に浸せばそれだけでも味わうことができる。

それらを一緒にとじられた卵がやさしい味でまろやかさを添えてくれる。

くわえてあっさりとした味付けの豚汁

変わったのは、食べ終わる頃に出てくる八女茶。

膨らんだお腹に落ち着きを取り戻してくれる一杯である。

 

周りから聞こえてくる会話を聴いていると、どうやらみんな新聞やらネットやらで移転の情報を入手してやってきているようだった。

 

「わざわざありがとうございます」

移転を知って訪ねてきたことを告げると、女将は笑顔で答えてくれた。

 

以前と変わらぬ味。

友のためだけに、また来よう。

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