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「●●のくせに」 〜財政出前SIM2030inのべおかを体験して~

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平成29年1月14日,私は「財政出前SIM2030inのべおか」を体験してきた。

 

イベントの内容,特にSIM2030については,既に他の参加者によって講評されているし,中身を知らずに体験する方が得られるものが大きいので,ここでは割愛する。

ただ,一度体験した者からの視点で一言いえば,各地で行われてきた回数分だけ,改良が重ねられ進化しているように感じられた。

 

それよりも私が気になったのは,SIM2030の改良具合より財政出前講座の講師の交代である。

 

以前,財政出前講座とSIM2030の今後の可能性について,SIM2030のファシリテーターはともかく,財政出前講座は現役かOBの中から次の者を見つけないといけませんね,といった趣旨のことを講師と話したことがある。

「財政」のことを語る以上,財政のことは当然に熟知しておく必要がある。そもそも知らないことを他人に説明なんてできないからだ。たとえできたとしても,言葉だけの上澄みの薄っぺらいものと,聞いた人も当の本人も感じるだろう。

それに,他人に専門分野について話す,説明するということは,「当事者」だからこそ説得力があるものだ。

さらに,政令指定都市とはいえ一地方都市の財政出前講座が全国各地でここまで人気になったのも,講師のキャラクターの濃さによるところも大きいだろう。

 

そんな前提がある中での,講師の交代である。

 

もともと延岡には,一年半の間における財政出前&SIM2030の進化を確認しに行くはずだったわけであるが(決して「おぐら」にチキン南蛮を食べにやってきたとか,地ビール「ひでじビール」の新酒を飲みにやってきたとか,こんにゃく麺の「枡元」の辛麺で締めにやってきたとか・・・そういった理由ではないことを申し添えておく。念のため。),講師がピンチヒッターに交代するということで,主目的はそちらに移ってしまった。

「代打」がどこまで財政のことを話すことができるのか。

 

入社4年目の,財政部門を経験したことのない職員に。

あえて悪意をもった言葉にすれば「財政未経験者のくせに」。



代打の人物像を先に述べておくと,一度でも会った人は知っていると思うが,人柄もキャラクターもよい。過去にはSIMのファシリテーター的役割もこなしており,囃家になりたかった講師ほどではないにせよ,大勢の人前で話すことは得意な方に思える。それに体型もなんとなく講師に似ている。

 

また,財政については,出前講座で触れる内容レベルではあるにせよ,今まで十数回も講師と一緒に各地を回っているし,既に一度はピンチヒッターを経験済みということなので,充分に頭に入っているだろう。

それに,伝えたい主旨は,やろうと思えばアクセス可能なデータから分析し導き出せるものであるし,既に市民向けにも公表されているものでもあったりするので,そんなに難しいものでもない。

 

残るところは,「当事者」性である。現場を経験した者であるか否か。

こればかりは,事実の積み重ねであり一定程度の時間を要する経験である。学んだだけであるとか短期間の努力でなんとかできるものではない。

 

現場経験者とそうでない者との説得力の違いは何なのか。

学者よりも,実際に現場でやっている人や勤め上げたOBのほうが,話を聴きたくなる。

それはリアリティがより実感できるからだろう。問題意識を持つとともに上手くいかない状況にいて,苦楽を,理想だけではない現実を知っているだろう。建前だけでなく本音も一定程度は聞けるだろう。

特に「財政」については一般の職員であっても直接的な関わりが薄く,話をじっくり聴く機会などないのだ。

 

代打の口から雰囲気から,そういったニュアンスは醸成されるのか。

福岡からの稀有な参加者として,私は遠い席から眺めていた。

 

財政出前&SIM2030の構成は,まず財政出前講座があってSIM2030があり,再び財政出前講座という構成になっている。

前半部分については,予想どおり疑問に対する指摘の深さや説明のリアリティさに物足りなさを感じた。それは私が既に一度同じ話を聞いているからかもしれないし,どうしても担当者としての経験や専門用語,業界ネタの話が聴衆の興味を引くところであり仕方がないかもしれない。

 

一転,SIM2030を終えたあとの後半部分については,熱のこもった,理解を促しつつ共感を場とともにするような話し方でノッていて,多くの参加者に伝えたいことを伝えられていたように思える。。

 

そう。

財政出前講座は後半が肝なのだと,私は思っている。

データに裏打ちされた現状の説明のあと,ゲームを通じ楽しみながら葛藤しながらと解決の道を体験したあとに,対話のその意味と重要性に気づきを与える。

 

財政出前講座の後半における「当事者」とは何か?

それは,財政担当者だけではなく,限りある歳入を執行する事業担当者であり,地方自治体を支える職員である。

いや,公務員というステータスに限定された話ではなく,現在だけでなく将来を見据えたお金の使い方に気づいた人であり,もっと一般化していえば自分事として考えられる人である。

誰であろうと現状に疑問を感じる「意識」である。

 

代打のその熱は,これまでの講師と同行した回数に現れているし,中途半端な気持ちでは大役を引き受けることはできなかっただろう。

 

対話とは会話ではなく,情報と価値観の「ぶつけあい」と「認めあい」である。

日々の業務からはじまり全国の年齢も生活も異なった人とのふれあいを通じて,その重要性と可能性を認識し実感していたからこそ,真に彼自身の言葉で,熱をもって語ることができたのだろう。

 

財政出前&SIM2030の伝えたいことからすれば,もはや講師による出前講座ではなく,代打である彼の立場からの出前講座であってもよいわけで,ひょっとしたら財政担当者という経験は必須ではないのかもしれない。

そうであれば,今後の代打である彼の出前講座に必要なものは,これまでの事業担当の立場からの経験と,財政出前&SIM2030の自身の事業へのフィードバッグ実践例だろう。

 

財政出前&SIM2030は,学ぶだけでは,気づくだけでは,その効果は不十分である。住んでいる自治体のお財布は,財政危機を煽っといて実はまだ大丈夫なのかもしれないが,今のうちから認識を共有し将来のため実践することに意味がある。

その点では主役であるべき市民をSIMに巻き込んで総合計画の策定に活かしたという酒田市の例が,未来への処方箋になると思う。



好評のうちに終わった財政出前SIM2030inのべおか。

 

聞くところによると,講師の財政出前講座のカンペである「秘伝の書」がオープンソースとしてばらまかれるそうだ。今後,各地で第1,第2の財政出前講座が生まれるだろうし,代打である彼の出前講座もまたどこかであるのだろう。

代打である彼にとって,「財政」の理解が進んだ先に何があるのか?

ひょっとしたら数年後に財政の門をくぐっているのかもしれないし,基本計画の策定に携わっているのかもしれない。

 

数年後のその時,代打である彼の出前講座を思い出すことを想像し,今後の活躍に期待したい。