ZIG ZAG WALK

おもしろきことは,よきことなり。

【延岡妄想日記】月のダークラガー

「ポツカリ月が出ましたら、

 舟を浮べて出掛けませう。

 波はヒタヒタ打つでせう、

 風も少しはあるでせう。 」

 

リズミカルなフレーズに情景が次から次へと浮かんでくる,中原中也の「湖上」である。



「君を見つけたんだ ストロボライトの中

 現れ 消える 一瞬のフラッシュバック

 君を見つけたんだ むせかえるスモークの中

 現れ 消える 一瞬のスターダスト    」

 

そして,テクノユニット「ゲッカンプロボーラー」の「流星ダンサー」の一節である。

 

三浦しをんの「舟を編む」で,主人公の馬締が一目惚れしてしまうヒロインの香具矢との出会いも,満月の夜である。

 

記憶を紐解いてみれば,真夜中のドライブの途中,海岸沿いの公園に車を止めて,海へと続く階段を二人登って降りれば,静かに波寄せる浜辺と遠くに見える火力発電所の赤色ネオンの上に,ひっそりと満月があったり。

 

学生時代に想いを寄せていた先輩に,しばらくたってから会いに行って,観光地を案内してもらいひとめぐりしたあとの最後に,眺める高台から見下ろすきらびやかな夜景の上にも,こっそりと三日月があったり。

 

暗闇を月が照らす,光と影の,音のない幻想的な夜。

月夜というと,こんな情景を想像してしまう。

 

だから,うっとりとする甘美な舌触りを想像していたのだけれども,全然違った。

 

ローストされた香ばしい苦味満開,麦芽満開の黒。

黒ビールが好きな私にはたまらないが,持っていた月のイメージとは程遠い。

そう思いながらグラスについでは飲み,ついでは飲みしていたのだが,ある時から苦味のあと,すっとしたのどごしのあとに,引き際にちょびっとした甘さがやってきたのだ。

 

月夜の詩は他にもあった。

 

「月が昇る頃にはたどり着くだろう

 baby blue 辛辣な夜の痛みなき出口に」

 

メンバーが入れ替わっては戻りしていたZIGGYの「月が昇る頃には」。

 

「MOONLIGHT ぼくらにまちがいがなく

 MOONLIGHT 涙が 嘘つきじゃなく  」

 

もう生の声で聴くことができなくなってしまった氷室京介の「MOON」。

 

苦難続きで前も見えない人生であったり,

後悔だけが残る悲しい思い出であったり,

すべての不幸を自分が背負い込んだ気になってしまいたくなるような夜でも,

自分以外に誰ひとりとして助けてくれる者はいないと思い込んだ夜でも,

空を見上げれば,道標として,希望として,

月だけは見守ってくれているのだ。

 

そんな気持ちにさせてくれる宮崎ひでじビール

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